その絶好の機会が来るかもしれない。理由を順に説明してゆきたい。
先ず、読者には周知の通り、わたしは最近株式市場のポジションをすべて利益確定し精算した。これらは基本的に米国株を対象としたポジションであった。
その米国株は岐路に立っている。Fed(連邦準備制度)は利上げを躊躇っており、利上げ回数の見通しを引き下げた。アメリカの株式市場はこれを好意的に受け止め、世界同時株安から回復、史上最高値付近で推移している。
基準となる米国株の相場見通し
このままFedがハト派の動きを続ければ、米国株は好意的に反応し続けるかもしれない。その可能性を考慮した結果が下落方向に賭けた株式ポジションの精算である。ジョージ・ソロス氏は既に米国株の空売りを始めているようだが、わたしは現状では下落方向に確定的な予想を持っていない。日銀と違い、アメリカの金融政策にはまだ緩和余地があるからである。
ではいつ、そして何故日経平均の空売りなのか? それは米国が利上げを続け、そして米国株がそれでも堅調に推移し続けた場合である。何故その時に日本株の売りなのかについても追って説明したい。
先ずは利上げについて考えよう。現状では、Fedは2016年に2回程度の利上げを見込んでおり、金利先物市場は1回の利上げを織り込んでいる。ソロス氏は1月にダボスで「Fedがもう一度利上げをすれば驚くべきこと」と述べたが、わたしも市場と同じく1-2回の利上げはあり得ると考えている。株式市場が回復している以上、利上げはあり得るだろう。今や中央銀行は市場の奴隷である。
利上げ後の株式相場の動向
では、利上げ後の株式市場はどうなるか? 米国株にはネガティブだろうが、しかし市場の利上げに対する反応は徐々に軟化している。そして日本株にはファンダメンタルズとしてはポジティブだろう。利上げ観測が再び強まればドルが反発する可能性があるからである。
しかし利上げはアメリカ経済に致命的な影響を及ぼすだろう。住宅ローンなどを通じて、ただでさえ弱い個人消費が引き締まってしまう。ドル高も輸出を減速させる。これは多くの優れたヘッジファンドマネージャーや経済学者が指摘している通りである。
それを知らずに米国が利上げをすればどうなるか? そしてFedのみならず市場もその危険性を無視し、米国株が堅調のままであったならば? その時日本株は米国株よりも高い位置にあるだろう。利上げにもかかわらずリスクオンのままであれば、円安と世界株高の両方を享受できるからである。しかしその時こそが絶好の売り場となるのである。
日経平均を空売りする
世界の株式市場はアメリカの金融引き締めを徐々に乗り越えながら進んできた。一番最初はバーナンキ前議長が量的緩和の縮小を口にした時で、株式市場は急落した。しかし株価はそれを乗り越えて史上最高値を更新してきた。その後の量的緩和停止、そしてイエレン議長による利上げ敢行にもかかわらず、一旦急落した米国株は反発し、史上最高値付近で推移している。
ここでジョージ・ソロス氏の著書『ソロスの錬金術』に書かれた相場格言を思い出したい。
強気相場は小爆発にときおり見舞われながら続いていく。そうしているうちに、だれも小爆発を恐れなくなる。このときこそ、大暴落の条件が整ったときなのである。
あと2回の利上げはアメリカの実体経済にとってかなり危険水域に近いはずであるが、それでも株式市場が強気であれば、量的緩和終了と利上げ開始を乗り越えた後、最大の脅威に対する最大の楽観ではないか。それこそが天井の合図であるとわたしは解釈する。
そしてそのとき、一番被害を受けるのは恐らく日本株である。リスクオフは円高を意味し、株安と通貨高の両方のダメージを受けることとなる。しかも極めつけは、日銀に有効な緩和余地がほとんど残されていないということである。日銀の追加緩和については以下の記事で分析した。
したがって、その時の株価の水準にもよるが、S&P 500よりは日経平均を空売りした方が有効である可能性が高い。また、日本株は下落したようで長期的にはまだまだ下落したとは言えない。ただ、具体的なポジションについてはその時の相場を見ながら決めてゆきたいと思う。
結論
ソロス氏が空売りを始めたタイミングとは少しずれたことになるが、以上がわたしが快く空売りできる条件である。もしかするとソロス氏の予想の通り、株式市場は利上げに屈し、これ以上上昇することなくそのまま下がってゆくかもしれない。それならばそれで良い。その時には1月に開始した金のポジションが更なる利益を生むだろうからである。
逆にそうならなければ、ドルは再び強くなり、わたしの金の含み益は振り出しに戻るかもしれない。しかしそうなった場合には、株式市場に絶好の空売りの機会が生じると覚えておきたい。どちらに転んでも利益の機会、というのが投資家にとって最高の状態であり、常にそれを目指すべきなのである。