2015年第4四半期のGDP速報値でアメリカ経済の減速が確認されたことにより、元々保有していた金のポジションを拡大した。米国の利上げが金融緩和に逆戻りするとの確信を得たからである。
2008年の金融危機の後、米国の量的緩和で暴騰した金価格は、Fed(連邦準備制度)が量的緩和を停止し、更には利上げへと進んだことで半値近くに暴落している。しかし米国の利上げは成功しない。そしてそうなれば金価格は再び高値へと向かうだろう。
アメリカ経済の減速が意味するもの
先日のGDP速報値はその相場観を裏付けた。ポジションを始める具体的なタイミングについてはいつも迷うものだが、このタイミングでより大きなポジションを取っても良いだろうと判断した。金については二度にわたってポジションを取ったことを既に報告している。
先ず最初にドル建てで金を買った。2015年12月23日の記事で最初に報告し、その後上記の記事で包括的に説明した。この記事では買い場を3度想定し、その時点で買い入れ想定額の50%は既に買い入れ済み、米国利上げの反転を確信した時にはこれを100%まで引き上げ、経済減速にもかかわらずFedが利上げにこだわり、金が1000ドル以下に下落した場合には買い入れ枠を増額し150%まで持ってゆくという戦略であった。
しかしその後Fedの弱気な態度や米国GDPの減速が明らかになったことで、既に事前の買い入れ想定額の100%を買い入れた。しかしすべてがドル建てではない。
金を買って何を売るか?
金を買うためには何か通貨を売らなければならない。ドル建ての金買いとは金の買いとドルの空売りの組み合わせであり、これは一度目の買い入れでの選択肢となった。
二度目に金を買った報告をしたのは2016年1月の日銀の追加緩和前、世界同時株安で円高となった時である。
世界同時株安による円高を受けて、ドル建てで既に購入している金とは別枠で、少量だが円売り・金買い(つまり円建ての金買い)のポジションを新たに作った。このポジションは、リスクオフのときには円が上がって損が出る代わりに金は上がり、リスクオンのときには円が下がって利益が出る代わりに金は下がるため、市場の短期的な混乱に影響を受けずに長期的な円安、金高に賭けることができるポジションとなっており、個人的にはかなり満足している。
この時点で金のポジションは想定買い入れ額の70%に達していた。そして今回、更に金を買い入れ、ポジションを想定買い入れ額の100%とした。ではどの通貨を売って金を買ったのか? 今回選んだのは韓国ウォンの空売りである。
アジア通貨の空売り
つまり、わたしの金に関するポートフォリオは以下のようになっている。割合は買い入れた金の総額を100%としている。(ポートフォリオ全体の100%ではない。)
- 金: 100%
- 米ドル: -50%
- 日本円: -20%
- 韓国ウォン: -30%
マイナスというのは空売りである。では何故韓国ウォンを選んだか? 理由は以下の通りである。
- 韓国の輸出の25%を占める中国経済への依存度
- GDPの40%を超える輸出への経済の依存度
- 安価な労働力に依存した輸出依存の経済モデルは経済の成長後には失速すること
- これまで利下げに積極的ではなかったため他のアジア諸国より通貨安がまだ進んでいないこと
正直に言えば、わたしは韓国経済の最近の事情について日米欧の経済ほどに詳しいわけではない。また、金に対して空売りする通貨は為替レートの変化に応じて変更する予定であり、いつまでもこの配分で投資を続けるわけではないが、とりあえずはこのポートフォリオで臨みたい。
人民元の空売りは?
また、人民元の空売りを避けたのは、中国政府の動向と経済指標が不透明であること、多くの投機家の目が既にそちらに向いていること、そしてソロス氏の言うように、中国が震源地だからといって、中国がもっとも被害を被るとは限らないことである。
ソロス氏はこの記事でアジア通貨の空売りを表明していた。人民元と言わずにアジアの通貨と言ったのは、そういう思惑もあってのことではないか。また、香港ドルという選択肢もあるが、こちらは経済的要因のほかに政治的要因が絡んでくる。
個人的には自分のポートフォリオには中国経済の減速に直接賭けるポジションが欠けていると考えていたので、今回のポジション変更には満足している。あらゆる可能性に対応できるようポートフォリオを多様化するのは良いことである。