アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)は米国時間3月15日から16日にかけて金融政策決定会合であるFOMC会合を行い、コロナ後初の利上げを決定した。株式市場を崩壊させる止められない利上げの始まりである。
ついに利上げ開始
今回の会合では元々0.50%の利上げも織り込まれていたが、ロシアのウクライナ侵攻を受けて市場はその可能性を除外していた。その織り込み通り、利上げ幅は通常通りの0.25%だったが、セントルイス連銀総裁ブラード氏だけは今回の会合で0.50%の利上げを主張して否決されている。
ブラード氏が0.50%利上げを主張した意味は小さくない。元々「インフレは一時的」でいずれ勝手に収まると根拠なく主張し続けていたパウエル議長に反論し、現在の利上げを主導したのがブラード氏らタカ派の連銀総裁たちだからである。
今後の利上げ速度はどうなってゆくだろうか。まずいつも通り発表された声明文を見てゆくが、やはり次のようにウクライナ情勢が言及されている。
ロシアによるウクライナ侵略は多大なる人的・経済的被害をもたらしている。アメリカ経済への影響は非常に不明瞭だが、侵略および関連する出来事は近くインフレに上昇圧力を与え、経済にとって重しとなりそうだ。
だがこの言及はあまり意味がない。投資家にとっての問題は、それでインフレを懸念し利上げが早まるのか、あるいは経済減速を懸念し利上げが緩やかになるのかである。だがそれについては書かれていない。Fedは言質を取らせないようにしているからである。
今後の利上げ見通し
今回の会合ではFOMCメンバーの今後の利上げ見通しをプロットしたドットプロットが発表されている。
こちらは声明文よりも具体的な手がかりを示してくれているが、前回12月に発表されたドットプロットではメンバーたちは年内に3回の利上げ(今回を含む)を見込んでいたのが、今回は年内に合計7回分ないし8回分となっており、Fedは前回から急激にタカ派になっている。8回分の利上げが行われると政策金利は2%になる。
だがそれも驚きではないだろう。Fedが急にタカ派になった理由は、金融市場でFedがそうすると予め織り込まれていたからである。今後の利上げ見通しを織り込んで推移する2年物国債の金利は次のようになっている。
まさに2%になっている。つまり、Fedは今後の利上げをどうするかを自分で考えているのではなく、2年物国債の金利が2%になっているからそれに従ってこれから金利を2%にすると言っているのである。
これまで何度もパウエル議長の「インフレは一時的」を批判してきた債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏が次のように言っていたのを思い出したい。
はっきり言ってFedがある意味が分からない。Fedは2年物国債の金利で代替可能なのではないか?
700人以上の博士号を持ったエコノミスト? 何というお金の無駄遣いだろう。ブルームバーグ端末で2年物国債を眺めていれば十分じゃないか。
しかしこうも2年物国債をなぞった結論しか出さないのでは、内部のエコノミストたちは普段そもそもどういう仕事をしているのかという話にはなる。それでも税金で高い給与は支払われる。有権者が文句を言わないからである。
パウエル議長は今回の会合でいつも通り利上げペースに決まった道筋がないと表明した。利上げペースは当然会合の日になってみなければ分からないだろう。その時の2年物国債の金利水準を見なければならないからである。しかし金利を眺めるだけのその仕事は12才児でも出来るのではなかろうか?
結論
ということで、一応フォローアップしてみたがFOMC会合に注目することにほとんど意味はないのである。今後の利上げ方針は市場の意向によって決まる。中央銀行は既に金利のコントロールを失っている。
あえて言えば、1月に発表された量的引き締めへの道筋について具体的なものが何も出なかったことは株式市場にはプラス材料だろうか。
これは恐らくウクライナ危機の影響であり、ウクライナがなければブラード氏やメスター氏などタカ派のメンバーがもっと強く量的引き締め開始を主張しただろう。
だがどちらにしても金利は2%まで上がる。あるいはこれまで上がり続けている2年物国債の金利が今後も上がればFedもそれに従うだろうから、今年の利上げ幅は2%では済まない可能性はかなり高いのである。
筆者を含め多くの著名投資家は政策金利が1%前後に上がるところが株式市場の臨界点だろうと推測していた。だが今や2%利上げが既定路線となり、それが更に上がろうとしている。
株式市場の命運は既に尽きている。短期的にはジム・ロジャーズ氏の言うように動いているが、どうなるだろうか?