前回の記事では米国が利上げをすれば金融市場全体がどう動くかを書いたが、それを踏まえて今回は、利上げの前後に為替相場で実際にどうトレードすれば良いかを書きたいと思う。
先ず前提となるのは、ドルとポンドが中期の買いであり、円が長期の売り、ユーロは売りだがECB(欧州中央銀行)次第ということであるが、現在の相場で重要となるのは、ドル買いと円売りを分けるということである。つまり、ドル円で相場を見てはいけない。
利上げ後の短期的見通し
先ずは短期の見通しからだが、利上げは当然ドル高要因である。また、利上げは一回限りではなく、Fed(連邦準備制度)は出来ることならば二度、三度と利上げをしたいと考えている。理由については以前説明した通りである。
しかしながら、利上げを連続して行うには壁がある。一つは金融市場の急落の可能性であり、もう一つはドル高による米国輸出業へのダメージである。ドル高が米国の経済成長に確かな悪影響を及ぼしていることは、GDP分析の記事で説明した。
これらを考慮すれば、先ず最初の利上げ後にFedは、二度目の利上げを急がないということを強調するだろう。そうすることで市場の反応を先ず見、市場が大慌てをしていないようであれば、二度目の利上げをほのめかして、また市場の様子を見るのである。
したがって、一度目の利上げからFedが二度目の利上げをほのめかすまでの間、ドル円には材料出尽くしの期間があることになる。しかし二度目の利上げが示唆されれば、また上昇トレンドに戻るだろう。
こうしたタイミングを厳密に読むことは難しいかもしれないが、実のところ投資家にはタイミングを気にせずに投資する方法がある。そのためにはポンドドルのレートを見ればよい。
ポンド
金を除外して考えれば、ドルのほかに買える通貨は経済が同じくらい成長しているポンドだけであるので、ドルが上がるにつれて投資家はドルからポンドへと資金を移してゆくべきである。
ドル円を買っている投資家も、ユーロドルを売っている投資家も、このためには円やユーロのレートを気にせずポンドドルのみを見ればよい。また、こうすればレートだけを見て売買すればよいので、Fedの様子を気にしてタイミングを厳密に計る必要もないわけである。
やや古い記事だが、上記の記事でマネタリーベースで見たポンドドルの適正レートは1.55だと述べた。米国経済と英国経済の経済成長がほとんど変わらない今、ポンドドルが適正値から離れすぎれば、割安な方に買いを入れれば良いのである。
米国が先に利上げするとはいえ、米国が利上げできる状況ならばイギリスも利上げできるのであり、現在1.5から1.55のレンジで動いているポンドドルはドル高に振れたとしても、底は精々1.4くらいだろう。個人的にはドル高になるにつれ徐々にポンドに軸足を移し、ポンドドルが1.4まで落ちればドルは完全に売り払い、それ以上のドル高には乗らないつもりである。
量的緩和通貨の売り
さて、これら買いの通貨の議論とは別に、円売りとユーロ売りがある。少なくとも円については長期の売りだとずっと説明している。2017年の消費増税まで日銀は緩和を止めることが出来ず、マネタリーベースは継続的に膨らんでゆくだろう。
これは追加緩和の有無とは関わりがない。既に国債を大量に買い入れている今、追加緩和はETFやREITの買い入れ増額となる可能性が高く、マネタリーベースの規模にはあまり影響しないだろう。考慮すべきは追加緩和ではなく、量的緩和がいつ終了するかということである。個人的には早くとも2017年度前半までは終了できないと踏んでいる。その後は経済の動向次第である。
一方で、もう一つの量的緩和通貨であるユーロについては、ECBは一番緩和余地のある中央銀行ではあるのだが、一方で日銀とは違い、量的緩和を止めることも出来る立場にある、一番身動きの取りやすい中央銀行である。
最近の報道を見る限りでは、2016年9月までとされた量的緩和の期限は延長される可能性が高いようであるが、その先どうなるかはやや読みにくいところがある。
円とユーロが何処まで下がってゆくかを見るためには、最初に述べたようにレートがそのまま役に立つわけではないとは言え、ドル円やユーロドルのマネタリーベースの比率を見てゆく必要があるのだが、それについてはそれぞれ個別の記事を書くことにしたい。
また、最終的には米国と英国が利上げできなくなり、ドルとポンドが下落するタイミングが来るため、その際には金を買うことになる。古い記事には既に書いており、大まかな方針は変わっていないが、またそちらについても新たに記事を書く予定である。