量的緩和で買えば儲かる相場は終わり、遂に世界の金融市場の終わりが始まった。ここから先は複数のバブルがいつ崩壊するかというカウントダウンの問題である。
米国の中央銀行であるFed(連邦準備制度)は2008年の金融危機以来初めての金融引き締めに動いており、何兆ドルもの貨幣が刷られたあと、その資金が引き揚げられるのだから、ただで済むわけがないのだが、市場は8月からの世界同時株安が反発したことで利上げを織り込んだとの自信を強めている。
しかし、そのような大きな材料がたかだか15%の株の急落で織り込まれるはずがない。では本当の問題は一体何で、これから市場はどうなってゆくのか、投資家はどうトレードすれば良いのかを、順を追って説明しようと思う。
揺らぐ前提としての強いアメリカ
先ず、現在の市場における大前提は、強い米国経済と強いドルである。消費増税で沈んだ日本経済と、債務危機から復活していないユーロ圏の経済、そしてバブルが崩壊しつつある中国経済を、米国経済が一人で引っ張ってゆく構図が今の世界経済である。
しかし米国だけで他の国すべてを牽引できるはずがない。量的緩和による円安とユーロ安、中国の通貨切り下げで、米国の経済成長は日本、ユーロ圏、中国に貿易を通して吸い取られており、このままドル高が続けば米国経済は他国の低成長に徐々に引き寄せられるほかないのである。
しかし、それでもFedは利上げがしたい。以下の記事で説明したように、他国より先に低金利から離脱し、量的緩和バブル崩壊からいち早く逃れようとしているのである。
ここまでが現在の状況である。では、このまま米国の利上げが進めばどうなるのか? すべてを決めるのはドルの行方である。
ドルはどうなるか?
投資家にとってドルは長らく数少ない安全通貨として重宝されてきた。他の通貨を検討してみれば、量的緩和のある円とユーロは買えず、コモディティが暴落したためオーストラリアなどの資源国の通貨も買えない。
投資家には米ドルと英ポンドしか選択肢がなく、これが長らく続いていた。この背景には当然、強いアメリカ経済がある。
しかし米国が利上げを急げばどうなるか? 0.25%の利上げが実体経済に影響を与えるということはない。しかし利上げも0.5%、0.75%となれば貸出金利や住宅ローン金利などを通して実体経済に効いてくる。
上記で書いたように、そもそも利上げがなくともドル高により米国経済は減速してゆくのだから、利上げが進めば尚更である。利上げはドルを押し上げるが、ドル高と高金利は米国経済を圧迫し、いずれかのタイミングで米国経済をマイナス成長へと押しやる。そしてFedは利下げに転換せざるを得なくなるのである。
そうなればこれまでのドル高は一気に逆転し、急激なドル安となるだろう。そうなれば市場のすべてが逆回転し始めることになる。
コモディティ高の到来
当然ながら真っ先に反発するのは金である。ドルとポンドに集中していた資金が堰を切ったように金に流れ込む。2011年から大きく下落している金は、大暴騰することになるだろう。
暴騰するのは金だけではない。ドルが下がれば原油や天然ガスなどのコモディティも上がる。上昇した商品価格は日本やユーロ圏の経済を圧迫し、しかもインフレ率を上げる。インフレが上がれば日本とユーロ圏は量的緩和を止めなければならなくなる。
そうなれば日銀やECB(欧州中央銀行)はどうするか? 通貨高とコモディティ高が経済を沈下させてゆくにもかかわらず、量的緩和が簡単に出来なくなるのである。これまでデフレのお陰で自由に動けていた中央銀行の動きが止まり、緩和が出来なくなるときこそが、量的緩和バブル崩壊のタイミングであり、株と債券が遂に暴落を迎える瞬間である。
ブラックマンデーの再来
1987年のブラックマンデーの原因が各国の中央銀行の協調失敗であったことを思い出してほしい。今回の量的緩和バブルの終焉も、恐らくは同じ原因になると予想している。中央銀行が動きを封じられる瞬間が来るわけである。
結論
米国経済は減速する。ドルは上がって下がる、株も上がって下がる、金は下がって上がる、コモディティは反発する。
問題は米国経済の減速が明らかになるタイミングであり、また何処まで減速すればFedが利下げに転換するかということである。2016年1-3月期にはGDP成長率が1%台にまで下がり、減速が明らかになる可能性があるが、金融緩和に逆戻りするほどではないだろう。
ドルが上がれば原油安となり、ガソリン価格の低下が個人消費を引き続き支える見通しであり、その分減速は緩やかになるかもしれない。しかしいずれにせよ、早ければ2016年6-9月期、遅くとも2016年10-12月期にはGDPの趨勢がはっきりすると思われ、Fedが金融緩和に逆戻りするとすれば、2016年の終わりか2017年になると大雑把に想定している。
つまり、ここから1年ほどの間、相場は行って帰ってくるわけである。それまでの間、米国の利上げは進んだとしても0.75%までであり、1%は非常に難しいだろう。つまり、最大で合計3回、どれだけ多くとも4回の利上げを最大として、ドルを徐々に売り、金を買い、株の暴落のタイミングを見極める必要がある。個別の戦略については別に記事を書こうと思うので、そちらを参考にしてほしい。
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