凄まじい速度で暴落していた中国株は、中国政府による怒涛の介入でようやく底をついたかのように見えるが、底をついたかのように見えるだけである。
そもそも、6月の半ばに中国株が下落し始めたとき、個人的には1年近く続いた上昇相場がようやく調整局面に入るのかと思い、深刻には受け止めていなかった。確かに中国株はかなり割高ではあったが、中国のバブルとは不動産市場と地方政府や民間の債務のことであり、株式市場のことではない。
今回のような急落は、例えば日本も2013年の5月に経験している。中国株についてもそういう類のものだと考えていたのだが、中国政府が過剰に神経質な対応をしたために、急落が暴落になりそうである。本稿では中国株がバブルに至った経緯と、今後の展望を説明したい。
そもそも何故バブルに至ったか?
中国株が本格的な上昇相場に入ったのは2014年11月のことである。上海市場と香港市場の相互接続が発表され、これまで中国人にのみ解放されていた上海A株が、香港市場を通せば外国人投資家にも取引できるようになった。
このことにより、海外投資家の資金が大量に流入し、11月時点で2500程度だった上海総合指数は半年で2倍の5000を超えた。
ここまでならば、比較的普通の資金流入相場であり、途中で調整などはあるものの、最後には妥当な水準に収まり、経済全体のバブル崩壊には繋がらないものである。
例えば最近ではベトナムも外国人の持株比率制限49%を撤廃し、株価は規制緩和が噂になる前の2014年1月から25%ほど上がっている。
中国に関しては、元々海外投資家の居なかった市場に海外の資金が一気に流入したことで2倍の上昇となったのだろうが、それだけならば妥当な水準まで調整すれば良いだけの話であった。しかし、それをややこしくしたのが中国政府の過剰な反応である。
中国政府による怒涛の株価支援策
先ずは中国政府が慌てて発表した株価支援策の一覧を挙げよう。
- 6月27日に貸出金利と預金金利を0.25%利下げ
- 証券会社による1200億元の株式買い入れ
- 証券会社21社に株式購入のための2600億元の融資枠
- 悪意ある空売りを捜査
- 中証500指数先物の売買を一日1200枚に制限
- 5%以上の大株主は半年間株式売却禁止
これに加えて、上場企業は株式の売買停止を申請しており、10日には1300社の取引が停止され、これは上海と深圳証券取引所に上昇する約2800銘柄の約半数に当たる。
つまり、上海総合指数は下げ止まったとはいえ、それは取引停止になっていない一部の銘柄に政府の息のかかった資金が買いを入れたということであり、投資家すべてが押し目買いに走ったということではない。
急落を悪化させる取引停止と売り禁
個人的には、証券会社による買い入れが必ずしも悪いとは言わない。しかしながら、取引停止と売却禁止はまずかった。
取引停止となった銘柄を持っている株主の心境を考えてみてほしい。市場は暴落していて、自分の資産は目減りしているはずなのに、それがいくら目減りしているかも分からず、しかも取引停止が解除されるまで逃げられず、その資金は他の市場にも投資できないのである。
そのような状況で取引停止が解除されればどうなるか? そのような市場とはもう一切関わりたくないと思うだろう。個人的にも中国株が安くなろうと手を出したくはない。この考えは11月から市場を牽引してきた海外投資家に顕著であり、彼らは売買停止中の保有株を売りたくてたまらないはずである。
大株主の売買停止については、ロイターによれば海外投資家でこの規制に該当する者はいないものの、規則としては海外勢にも適用されるとのことである。中国市場では何でもありだということを、中国政府が証明してしまった。
結論
繰り返すが、今回の中国のバブルは海外投資家の資金流入によるものであり、中国経済全体のバブルとは関わりがない。しかし中国政府の過剰な反応は特に海外投資家の不信感を煽り、不安定な中国市場をより不安定なものにするだろう。少なくとも、このままリバウンドして大団円ということはないはずである。
中国株の暴落とギリシャ問題を契機として起こった世界同時株安については、以下の記事を参考にしてほしい。基本的にこれらは別のものである。