日経平均急落、中国株暴落、世界同時株安の原因を探る: 原因はギリシャでも中国でもない

7月8日の日経平均は600円安、3%以上の急落となった。上海市場は5.9%安と、中国政府の介入にもかかわらず暴落が止まらない。

折しも前日の記事で弱気相場を示唆したところで、タイミングが良すぎたのだが、もう一度その部分を引用しよう。

株式市場の世界的な荒れ模様とは対照的に、個人的には金融市場はあまりに凪であると思っている。ポジションをほとんど持っていないからである。個別株は別として、マクロ的なポジションはほとんど精算してしまった。投資先が見つからないのである。

株式は高すぎ、債券はバブルであるが一度の利上げでは揺るがず、ドル円もユーロドルもまだ高く、金の買い時はまだであり、ギリシャの株式市場は閉まっている。ポジションをこれほど精算したのは、2013年5月の日本市場の急落前以来である。

かくして2013年5月以来の急落となりそうである。

この流れは以前より示唆してきた「利上げ前の急落」であり、そしてこれは「本当の暴落」ではないのも書いてきた通りである。以下の2つの記事が参考になるだろう。

これらの記事では次のように書いている。

今年中に米国の利上げで株式市場がどれだけ下落しようとも、それは本当の暴落ではないことも書いた。

投資戦略の記事で重要なのは次の部分である。

仮に、株式市場が利上げまでに押し目らしい押し目も作らない場合は、量的緩和で作り上げられたバブルは長続きせず崩壊する可能性が高くなる。しかし、利上げ前後における株式市場の急落が大きければ、金融引き締めを織り込んだとする市場の自信は強くなり、利上げ後のバブル相場は大きく長いものになるだろう。

しかし忘れてはならないのは、どれほど急落が大きくなろうとも、これから利上げまでに市場で踊っているのは投機筋のみであり、本当に重要な家計や年金などの資金は素知らぬふりで、国債や社債の利回りが上がるのを待っているということである。彼らの売りは、利上げを乗り越えたと慢心し切っている株式市場に降り注ぎ、本当の暴落を引き起こすことになる。それはまだ先の話である。しかし、投資家はそれまでのシナリオをしっかり見据え、取ることのできるリスクのみを取っていかなければならないだろう。

かくしてその時が来ているということである。いずれは反発することも分かっているので、いまは空売りもしていない。本当の暴落は1-3年後になるのではないか。

何故市場は急落したか

目先の相場の分析に戻ろう。先ずは、わたしがほとんどのポジションを精算した理由である。

米国が量的緩和を開始して以来、グローバル・マクロの投資家には常に何らかのトレンドフォローが可能であった。米国株は上昇し、2012年に日銀が量的緩和を開始してからは、世界中の投資家が円安株高のトレンドに乗った。日本の資産株は大いに上昇した。

2015年の始めにECBが量的緩和を開始したことで、投資家はユーロ安と欧州株を買った。ここでも欧州の資産株を紹介し、それらはすべて上がっている。

しかし、その次のトレンドが無いことにふと気付いたのである。前日の記事では単に、魅力的な投資先がないと表現したが、要するに投資家が乗るべきトレンドが無くなってしまった。これは米国が量的緩和を開始して以来初めてのことである。

買い下がりのできるものはあるか?

今回の急落がどの程度のものになるのかを正確に予想することはできないが、量的緩和の延長など当局が何か新たな発表をしない限り、乗るべきトレンドの不在という状況は変わるわけでもない。

一つ言えるのは、中国の景気減速懸念から原油が急落しており、物価が下がれば日銀の追加緩和は一番有り得るということである。つまり、円安トレンドは健在となる。

ドル円については115-120での買いを推奨しているが、ボラティリティが高まりうることは念頭に置いた方が良いだろう。以下の記事も参考にしてほしい。

もう一つ買い下がれるとすれば既にかなり下がっている欧州株だが、銘柄は相当厳選した方が良い。

これまで紹介してきたパリの不動産会社Gecina (EURONEXT:GFC、Google Finance)やフランクフルト国際空港を保有するFraport (XETRA:FRA、Google Finance)などの資産株は、量的緩和前のレンジに近づき、あと少しで買い下がれる水準である。

また、中国の景気が大幅に減速する懸念があるため、これまで紹介してきたDaimler (XETRA:DAI、Google Finance)などの輸出株は、避けた方が良いかもしれない。逆に言えば、原油安で恩恵を受けるイギリスの格安航空会社Easyjet (LON:EZJ、Google Finance)などは、あと10%下がれば買いに行ける水準である。

急落の度合いから将来のバブルの大きさを見極めよ

いずれにせよ個別株の世界であり、個別を買うときには、指数の空売り、恐らくS&P 500の売りを混ぜるべきである。株式市場全体がいつ下げ止まるかに賭けるのではなく、上で紹介した記事でも書いたように、今回何処まで下がるかによって、このバブルが来年以降何処まで行くのかを見極めるのである。

ギリシャ問題が解決すれば株式市場は一時的に反発するかもしれないが、それが世界同時株安を解決するかどうかはやや懐疑的である。上記で述べた、トレンドの不在という問題は変わらないからである。

こういう相場では、ファンダメンタルズではなく資金の流れを読む能力が必要となる。これまでのバブルがどういうものであったか、歴史を思い出そう。